中原の覇者、曹操(そうそう)と、天才軍師諸葛孔明を従えた人徳の人、劉備(りゅうび)。三国志と言えば、まず上がるのがこの二人でしょう。
しかし、三国志はあくまで三国のお話であり、もう一人、呉の存在を無視するわけにはいきません。
第一印象は大切です
しかし、その呉ですが、孫堅(そんけん)→孫策(そんさく)→孫権(そんけん)と、三代も英雄たちが代わるせいもあり、また、『三国志演義』の演出のせいもあり、目立った功績は全部劉備の蜀軍に横取りされてしまい、地味なイメージがぬぐえません。
とくに孫権に関しては、曹操、劉備に比べて年齢が若く、また孫家の三代目ということもあり、登場するのが一番遅い第三の男なため、印象がものすごく薄くなってしまうのです。
現実社会でも、第一印象というのはとても重要です。孫権の場合、特にここが弱いと思うのです。
孫権の初登場シーン
孫権の初登場シーンといえば……そう、赤壁です。ちなみに、ここで語るのは「第一印象」ですので、『三国志演義』や『正史』での孫権の初登場シーンという意味ではありません。三国志に初めて触れた方が初めて孫権を目にするシーンということです。
初回からガッツリと『正史』を読んだという方もきっといらっしゃるとは思いますが、たいていはダイジェスト版から入ると思いますので。
孫権の初登場シーンは、八十万の大軍をもって南征してくる曹操に対し、たった二千の軍しか持たない劉備がやってきて、同盟を組んで共に戦おうと持ちかけてくる場面です。この時孫権は、勝ち目のない戦いに参戦すべきかどうかを悩んでいる立場でした。
というわけで、読者の第一印象は、優柔不断。
……これがいけなかった!
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参考までに、孫堅・孫策の第一印象
それでは、孫権の父である孫堅は、どんな初登場シーンが思い浮かぶでしょうか。創作物にもよりますが、やはり、ここではないでしょうか。
17歳の若かりし頃、海賊一味をみかけた孫堅が、みんなの制止を聞かずに飛び出し、奇策を持って海賊たちを散々懲らしめた上に、首領の首をとって戻ってきたというエピソードです。
第一印象は、向こう見ずで勇猛果敢、といったところでしょうか。
次に、孫権の兄、孫策を見てみましょう。孫策は短命すぎるため、ダイジェスト版には登場すらしない武将ですが、あえていうなら、ここでしょうか。
196年、袁術(えんじゅつ)に帰属していたとき、孫策は敵情視察に一人で出かけます。そこで、敵将の太史慈(たいしじ)と出会い、激しい一騎打ちが行われます。結局その時には勝負はつかずに終わり、その後、孫策軍に負けた太史慈は、孫策の部下になります。
大将自ら敵陣に乗り込んで行って一騎打ち、これは向こう見ずで勇猛果敢な父孫堅を彷彿とさせる第一印象です。父、兄と比べても、やはり孫権は、どうしても地味なイメージとなってしまうのです。
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