揚州は長江で南北に分けられ、合わせて6郡から成ります。
その中で九江郡の寿春県は州の長官が住む県庁所在地みたいな場所でした。
北の九江郡と盧江郡は袁術(えんじゅつ)が押さえており、
正式に揚州の州牧(長官)に任じられていた劉繇(りゅうよう)は諍いをさけて長江の南、
呉郡の曲阿に州の官府を設置しました。
劉繇は皇族の血筋で名門だったため周辺の勢力は皆、力を貸したとあります。
例えば太史慈(たいしじ)とか樊能(はんのう)、于糜(うび)などですね。
ちなみに揚州のあと他の郡は丹陽郡と会稽郡、そして豫章郡の3つです。
揚州の人口の半分以上は異民族
『晋書』によると、呉の王朝が滅んだときで、揚州の人口は約31万戸であったそうです。
しかも、なんとその半分がこの時点で異民族である「山越族」でした。
袁術が揚州の北で威張っていた頃は、江南に住む山越の割合はもっと大きかったでしょう。
そこからだんだん漢民族が増えていきます。
北方の戦乱を避けてきた流民が多かったようで、少しずつ山越の土地に進出していくのです。
山越は山岳地帯に住んで、おもに焼き畑農業を行って自給自足をしていました。
宗族がまとまって生活をしていたようです。
それを壊したのが移民たちです。
やがて平地に住み増えてきたこの漢民族と抗争し、和睦し、共生し、そして同化に至ります。
曹操もガンガン山越族を利用しまくる
あの曹操すらも山越を上手に活用しています。相手は江南で台頭する孫家です。
197年、呉郡太守陳瑀(ちんう)を使って山越を扇動して孫策の会稽を襲撃。
孫権(そんけん)の代にも、丹陽に住む山越の指導者、費桟(ひせん)に印綬を与えて反乱させます。
ここは孫策(そんさく)の娘を娶った陸遜が活躍し打ち破ります。
陸遜(りくそん)は山越討伐でどんどん武功を高めていきます。
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山越族の若者で成り立つ軍隊
呉の軍隊にいた山越は約16万人。呉の兵の半数以上が山越という計算になります。
呉は反抗する山越は惨殺、全員を平地に強制移住させ、
若者は兵に徴発。他は部民として役使するという過酷なものでした。
先住民を奴隷としてこき使う開拓者さながらです。
お陰で江南は栄えます。
当初江南の揚州の郡は4つでしたが、
江南地帯の開発は順調で、孫権が皇帝になるまでに10郡まで増えています。
無論、山越の犠牲を多分に払っての成果です。
ちなみに呉という言葉の意味は、口の字が中にあって大声で意味不明なことを話すという意味で、
要は野蛮な異民族が住む場所ということです。
山越も黙ってはいないですから、反乱も絶えなかったことでしょう。
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逆手に取って偽りの降伏で報復
228年、呉の周魴(しゅうほう)が偽って降伏し、魏の曹休(そうきゅう)を誘き出し、陸遜がこれを打ち破ります。
曹休は10万の兵を失ったことで、魏に戻ってから憤死したそうです。
これは実は頻繁に内通する山越の事情を逆手にとった計略でした。
当時でもまだ乱の兆しとなる山越は結構いた証拠でもあります。
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三国志ライター ろひもと理穂の独り言
今でこそ南京をはじめとする江南地方は国内随一の穀倉地帯、
文化的先進地域ですが、昔はまったく別の顔をしていたようです。
つまりド田舎ですね。
袁術が領土拡大のために江南に孫策を派遣したようにいわれていますが、
こんな異民族ばかりで反乱の絶えない土地を都会人の袁術が欲しがるわけがありません。
孫策が僻地であれば独立できるだろうと考えたまでのことです。
アメリカ大陸に移住したイギリス民のようなものでしょう。
結果、アメリカの方が巨大な国になってしまいますが。
孫権は219年ごろまで山越に手を焼いていて思い切った行動はとれていません。
ようやく治まって、220年に関羽を討つのです。
袁術から独立したがった孫策のフロンティアスピリットによって、江南の発達は始まったと言えます
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