孫堅が長生きしていたら呉はどうなっていた?


 

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北方謙三風ハードボイルドな豪傑(曹操・劉備・孫堅)

 

三国志さんごくしの「・呉・蜀」、それぞれの代表的な主君は、曹操そうそう孫権そんけん劉備りゅうびとなります。この三人の中で、実は孫権そんけんはかなり年下。ほぼ一世代ぶん、曹操そうそう劉備りゅうびよりも若いのです。

 

呉の孫堅

 

 

黄巾賊こうきんぞく討伐や、反董卓とうたく連合軍の時、若い頃の曹操そうそう劉備りゅうびと比肩した活躍をしていたのは、孫権そんけんの父である孫堅そんけんという人物でした。

 

孫堅逝く

 

残念ながら、彼は反董卓とうたく戦線が崩壊した後の群雄割拠期に、劉表りゅうひょうとの戦争で戦死を遂げてしまいます。享年37歳と、本来なら、まだまだ活躍できたはずの年齢でした。

 

孫堅(37)の自慢の息子たち 孫策(17)、孫権(10)

 

史実では、この父の死を受けて急遽家督を継いだ孫策そんさくが、圧倒的な勢いで江南の地を平定し、さらにその孫策そんさくの病死を受けて年少にして家督を継いだ孫権そんけんが、兄が平定した土地を守り抜く堅実な経営で、の国を立ち上げることになります。

 

海賊時代の孫堅と孫策

 

ですがここで、あえてこう考えてみましょう。 呉の発展の基礎を作ったと言うべき孫堅が、そもそも戦死せずに頑張っていたら、三国志の世界はどう変わっていたでしょうか?

 

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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孫堅ならば間違いなく曹操や劉備のライバルを張れた筈だが

孫堅

 

孫堅そんけんが戦死をせず、健康なまま、むしろ長生きをしていたら?

 

呉の勢力を率いる孫策

 

本来なら孫策そんさくが、父の急死という大混乱からの「巻き返し」で群雄割拠時代に追いついてくるところですが、孫堅そんけんが健在ならば、まず曹操そうそう劉備りゅうびとキャリア的には同じラインから、「」はスタートできます。むしろ曹操そうそう劉備りゅうびよりも初期条件としては安定しているかもしれません。

 

正史三国志_書類

 

というのも、『正史三国志さんごくし』に依ると、孫堅そんけんの死亡直前の「手持ちカード」は以下の通り。

 

  • 安定感のあるリーダーとして、江南で絶大な人気と信頼を得ていた
  • 既に程普黄蓋、韓当という勇将を抱えて、戦場での名望も知れ渡っていた
  • (『三国志演義さんごくしえんぎ』では関羽かんうの手柄にされていますが正史では)実は董卓とうたく軍の華雄を討ち取ったのは孫堅そんけんの手柄である
  • 曹操そうそう劉備りゅうびと面識があるので同盟し共闘することも可能

 

李傕、李カク、孫堅

 

やりようによっては、むしろ曹操そうそうよりも先に天下に王手をかける可能性もありそうな好条件です。少なくとも、曹操そうそう劉備りゅうびのライバルとして、拮抗した駆け引きを見せてくれる存在になったのではないでしょうか?

 

そしてもうひとつ、彼には手持ちカードがあります。

 

孫策と孫権

 

  • 優秀な二人の息子、孫策そんさく孫権そんけんを、跡継ぎというよりは戦力として投入できる

 

ということです。ただし、私の考えるところ、実はこれについては、好条件とも限らないかもしれません。このカードが裏目に出て「うまくいかなくなる」可能性もあります。どういうことか?先に「うまくいく場合」を説明してから、「うまくいかない」懸念をお話しましょう。

 

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楽観シナリオ:孫策と孫権が強力に機能する

孫策に攻撃される黄祖

 

うまくいく場合の想像は、こうです。孫堅そんけんが親玉としてドンと構えている中、孫策そんさく孫権そんけんが、それぞれ血縁将軍として領土拡張作戦に投入される。正史における、兄弟それぞれの特性から、孫策そんさくが軍事を担当し、孫権そんけんが内政を担当するのがよいでしょう。

 

呉の小覇王・孫策

 

すなわち、孫策そんさくが軍事で敵を撃退し、敵地を占領。その占領地の内政を、孫権そんけんが入り、安定の戦後復興を施して民心を得る。この役割分担をすれば最強ではないでしょうか。

 

 

劉表りゅうひょうなどは早々に平定され、袁術えんじゅつもこの兄弟によって始末され、さらに、孫策そんさくが若死にさえしなければ、そのまま劉璋りゅうしょうのところまで脅かす遠征ができたでしょう。これが、うまくいった場合のパターン。孫策そんさく孫権そんけんは、「伝説的な名兄弟」として、もしかすると三国志さんごくしの主人公にまでなってしまう勢いを得たでしょう。

 

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悲観シナリオ:孫策が戦略にハマらない、そして孫権が育たない

周瑜と孫策(断金の交わり)

 

しかし!

 

 

中国史ちゅうごくしのみならず、日本史にほんし世界史せかいしを広く見た時、気になることもあります。父親が偉大に道を切り開き、その息子が武闘派(孫策そんさく)および穏健派(孫権そんけん)であるパターン。父が成功すれば成功するほど、だんだん、以下の問題が出てくる傾向にあります。

 

  • 武闘派の息子にとって父親の存在が目障りになり、家庭がギスギスする
  • 穏健派の息子のほうは、気楽な立場で守られすぎになり、リーダーとしては、育たない

 

そして、お決まりのパターンとしては、

 

  • 武闘派の兄が敵(曹操そうそう?)の陰謀にかかって父に反乱し、国が分裂して、終わる
  • 父が死んだ後、武闘派が兄につき、内政派が弟につき、後継者をめぐって国が分裂して、終わる

 

これはもちろん、悲観シナリオとして考えた展開です。ですが、世界史せかいしでは「あるある」なパターンでもあり、あながち、悲観すぎるとも言えない気もします。

 

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まとめ:史実の家督継承は実は最高の条件だった?

北方謙三 ハードボイルドな孫堅

 

ですが、このように、イフ展開をいろいろ考えていくと、意外なことにも気づかされます。

 

正史せいしにおいては悲劇である、孫堅そんけんの急死と、孫策そんさくの病死。しかし見方を変えれば、事業を開いた者が、最高のタイミングで次代にすべてをバトンタッチしたからこそ、後継者側の団結力も高く、家臣たちも引き締まったとも考えられます。

 

孫策が亡くなり呉を継ぐ若き孫権

 

特に孫権そんけんという人物には、若くして家督を継いだという責任感によって、あれだけのオオモノに急成長したという印象があります。父と兄の急死がなければ、孫権そんけんは平凡な人材に収まっていたのかもしれません。悲劇である孫堅そんけんの死も、息子が皇帝を名乗るほどのオオモノにまで成長したきっかけとしては、最高のタイミングだったともいえるのではないでしょうか?

 

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三国志ライターYASHIROの独り言

三国志ライター YASHIRO

 

魏呉蜀ぎごしょくの中でも、とりわけ安定感と団結力が強く見えるの、その組織力の秘密は、実は「開祖が37歳という若さで急死した」ショック効果が良い方向に働いたおかげだった、と言えるのかもしれません。

 

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とにかく小説を読むのが好き。吉川英治の三国志と、司馬遼太郎の戦国・幕末明治ものと、シュテファン・ツヴァイクの作品を読み耽っているうちに、青春を終えておりました。史実とフィクションのバランスが取れた歴史小説が一番の好みです。 好きな歴史人物: タレーラン(ナポレオンの外務大臣) 何か一言: 中国史だけでなく、広く世界史一般が好きなので、大きな世界史の流れの中での三国時代の魅力をわかりやすく、伝えていきたいと思います

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