関羽と言えば、三国志の主人公の一人である劉備の義弟であり、三国志の登場人物の中でも特に人気が高い人物の一人ですね。
関羽の人気は本場中国でも高く、古くから道教の神として崇拝されるほどでした。
今回は、北方謙三先生の『三国志』(以下、「北方三国志とします。)に登場する関羽について解説していきたいと思います。
※ネタバレを含む内容です。
劉備との出会い
まずは、「北方三国志」での関羽の登場から見ていきましょう。一般的な三国志作品であれば、劉備・関羽・張飛が義兄弟の誓いを行う「桃園の誓い」から物語が始まりますが、「北方三国志」ではなんと、「桃園の誓い」の場面が登場しません。
では、関羽はどのように物語に現れてくるのでしょうか。
「北方三国志」の冒頭は、馬の輸送任務から始まります。馬商人から馬の輸送を請け負った用心棒たちの中に、劉備と関羽・張飛がいたのです。盗賊を恐れて逃げ出そうとする用心棒たちの中で、請け負った仕事を果たし、義を全うすることを説く劉備に共感した関羽は劉備に従い、任務を全うします。
義に厚い関羽は、乱世にあって信義を何よりも重んじる劉備に興味を抱き、弟分の張飛と共に劉備と酒を酌み交わします。その中で、天下平定を目指す劉備の志に感銘を受けた関羽は、張飛ともども劉備と義兄弟の契りを結ぶことになりました。
三兄弟の取りまとめ役
劉備・関羽・張飛が義兄弟の誓いを結んだ時、関羽は最年長でしたが、劉備の義弟という立場になります。しかし、義理を重んじ、劉備に心酔する関羽はきちんと分をわきまえ、劉備に忠誠を誓っていました。
その一方で、人徳の裏に激情を秘めている劉備が激情に駆られそうになる時には、義弟として劉備をおしとどめる役割も果たしています。
しかし、劉備が諸葛亮に惚れ込み、何度も諸葛亮のもとを尋ねた際には、義兄劉備の心を奪った諸葛亮への嫉妬なのか、諸葛亮の才能に疑問を呈する場面もありました。
ただし、諸葛亮の策略によって曹操の大軍を破った際には、諸葛亮の才能を認め、以後は諸葛亮を軍師と仰いで尊敬するようになります。
このように「北方三国志」の関羽は、劉備と同様に仁義を重んじる人物であり、義弟として、家臣として劉備に絶対の忠誠を誓う人物として描かれています。
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関羽の大ピンチ:曹操への降伏
関羽は作中で、大きな危機を経験しています。それが曹操への降伏でした。
呂布の死後、徐州を治めていた劉備は曹操と対立したため、曹操の大軍が攻め寄せてきました。劉備軍は壊滅し、関羽は劉備・張飛と離れ離れになって孤立してしまいます。劉備の死を覚悟した関羽は自らも死を選ぼうとします。
しかし、そこに現れたのが曹操の配下にいた張遼でした。張遼はかつて呂布の部下でしたが、呂布と共に捕らえられた際に、劉備と関羽の嘆願によって命を助けられ、曹操に仕官していたのです。
関羽に恩義を感じていた張遼は、関羽を説得し、死ぬことを思いとどまらせようとします。張遼の説得を受け、曹操に捕らえられた劉備の夫人を守るために関羽は恥を忍んで曹操の配下となります。
義を重んじる関羽としては、曹操に仕えることは不本意でしたが、袁紹軍との戦いでは敵の猛将・顔良と文醜を討ち取って曹操への恩を返し、劉備の下へと去っていきます。
曹操は関羽の武勇と仁義に惚れ込み、自分のもとに留まらせようとします。
しかし、最後には曹操も、関羽の劉備への愚直なまでの忠義に感じ入り、関羽を劉備の下へ帰しています。
このように、敵までも魅了する高潔な人格と武勇こそが関羽の魅力なのです。
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関羽の最期
関羽はその後も劉備の義弟にして筆頭格の将軍として戦い続け、劉備が蜀に移ったのちは荊州を拠点に曹操軍と戦い、曹操の本拠地である許都を脅かす活躍をみせます。
しかし、孤高の英雄であった関羽と部下たちの間には次第に隙間が生まれていました。その隙間をついたのが曹操でした。
曹操は司馬懿の献策に従い、呉の孫権と密かに手を組み、関羽を挟み撃ちにします。
関羽が曹操と戦っている最中、曹操と結んだ孫権は背後から関羽を攻め、関羽の部下だった糜芳の裏切りもあり、関羽は一気に追い詰められてしまいます。
追い詰められ、味方をほとんど失った関羽でしたが、最後まで誇りを失うことはありませんでした。わずかな兵をまとめ、遠く蜀にいる劉備の下に帰るため、最後の戦いを挑みます。
しかし、圧倒的な呉の軍勢の前に包囲され、戦場に散ることとなりました。「北方三国志」第9巻の最後にあたる関羽の最期の場面は、「北方三国志」のクライマックスともいえる名場面であり、涙無くしては読めないシーンとなっています。
是非とも読者の皆さまには、「北方三国志」を手に取って読んでみていただきたいと思います。
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三国志ライターAlst49の独り言
いかがだったでしょうか。関羽は言わずと知れた三国志のメインキャラクターの一人ですが、「北方三国志」の関羽は仁義を貫き、弱きを助け強きをくじく仁侠道を地で行く理想的な好漢として描かれています。
筆者の考えとしては、北方謙三先生が「北方三国志」でもっとも思い入れのあるキャラクターの一人が関羽だったのではないでしょうか。だからこそ、関羽が好きという方は、ぜひとも「北方三国志」を読み、北方謙三先生が描く関羽の活躍を堪能してみてはいかがでしょうか。
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