外戚と宦官の皇位継承を巡る争いの結果、思わぬ幸運を手にしたのが菫卓(とうたく)です。菫卓は、漢民族ではあるものの、人生の大半を異民族である羌賊との戦いに費やしてきたワイルドな男でした。
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何故、董卓が王宮に入ることが出来たのか?
本来ならば、命令なしには、王宮に近寄る事も出来なかった菫卓ですが、何進大将軍が、宮廷の宦官に重圧を掛ける為に菫卓や丁原のような地方軍閥に上洛するように命令を発していたので、これを千載一遇のチャンスと見た菫卓は、3000名の軍を率いて、急いで上洛してきたのです。
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運良く少帝と弟の劉協を保護した董卓
さらに幸運な事に、洛陽に向かう菫卓の下に争乱から逃げてきた少帝と弟の劉協がやってきます。
これを菫卓は、強引に保護して凱旋将軍のように堂々と洛陽に入城します。帝を擁しているというのは、この時代、絶対の権力者である事を意味します。菫卓は、洛陽に入った途端に独裁者の本性を露わにしました。
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董卓、独裁政権の始まり
洛陽に残る、何進の兵力を帝の威光を盾に吸収して兵力を増強して、反対勢力を対抗できないようにした上で、まず、凡庸で君主の才能に薄い、少帝を独断で廃して弘農王に格下げします。
そして、弟の劉協を献帝として即位させてしまうのです。これに憤慨した袁紹は反論しますが、軍事力を持たないので、菫卓はどこ吹く風です、最期には暗殺を恐れて袁紹は逃亡します。
董卓の暴走は止まらない
菫卓は、これだけではなく、弘農王、劉弁を殺害し、生母の何皇后を毒殺、外戚の何氏の勢力を根絶やしにしてしまいます。
次に菫卓は、相国という地位に自ら上り、諸将の顰蹙を買います。相国とは、漢の劉邦の功臣だった䔥何(しょうか)が就いていた特別職で、丞相よりも上、以後400年、畏れ多いとして誰も就かなかった職です。
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董卓の暴走はまだまだ止まらない
菫卓は、今度は洛陽中に部下を放って、富豪の家に押し入っては、金銀財宝を奪い、美女を掴まえてきて後宮にいれてしまいます。そうして、かき集めてきた金銀財宝と美女をはべらせて、菫卓は、酒池肉林の毎日を送るようになります。
もちろん、政治は滅茶苦茶、菫卓に意見するものは、見つけ出して、目をくりぬき、舌を抜いて殺害したり、大釜で茹で殺したり、およそ、人間ではないような殺し方をしました。逆らうモノには容赦をしない菫卓の恐怖政治の幕開けでした。
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董卓の横暴な行動は日増しに拡大
菫卓の横暴は、日増しに拡大し、皇帝しか乗れないような傘付きの馬車に乗って洛陽中を乗りまわし、一族を次々と高い地位に就けるなど、もはや皇帝自体を蔑ろにした振舞いを平気で行うようになります。
元々、肥満気味だった菫卓は、酒池肉林と暴飲暴食で体重は200キロにまで到達したと言われています。個人の暴虐なら、まだ我慢できるとしても、王室を蔑ろにされては我慢できる筈もありません。
董卓を暗殺するため、立ち上がった曹操
何度かの菫卓暗殺計画が出ては失敗しを繰り返す内に、立ちあがったのが曹操でした。曹操は、持ち前の才能で菫卓に取り入っていたので、今度は暗殺が成功するかに思えましたが、これも失敗。
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反菫卓連合軍の結集を呼びかける曹操
曹操は、菫卓の追手を逃れて、間一髪で城の外へ脱出し、一度は捕まりますが、同じ志を持つ陳宮に救われて故郷まで逃げのびます。曹操は、もはや、内部工作で菫卓を討つのは無謀と悟り、父、曹嵩に頼んで大金を用意させて、中国全土に反菫卓連合軍の結集を呼びかけます。
時期を掴み、大金を積んだ事もあり、曹操の呼びかけに各地の諸候は共鳴し、瞬く間に大軍が終結しました。そのメンバーは公孫瓚、袁紹、劉岱、袁術、陶謙、孫堅、馬騰、王匡、劉備、孔融、鮑信、劉表という錚々たるオールスターでした。
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反菫卓連合軍のリーダーを袁紹に
巧妙な曹操は、これらの反菫卓連合軍のリーダーを諸候では一番、出自が漢王朝に近い袁紹に指名して、自分はその指揮下に入ります。かくして、洛陽に陣取る、悪の菫卓対、正義の連合軍という図式が完成するという運びになるのです。
三国志演義は、一応史実をベースにしていて、正史も、大体ではこのような流れですが、何とドラマチックなんでしょうか。まさに事実は小説よりも奇なりで、三国志が時を超えて、語り継がれる魅力に溢れているのも分かる気がしますね。
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