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平原君(へいげんくん)ってどんな人?欠点多いけど結果オーライ!人間臭い趙の英傑

2015年11月29日


 

平原君

 

キングダムの舞台である戦国時代の末期、強大になる秦(しん)に対抗して

戦乱の時代に光彩を加えた、戦国四君という存在がありました。

はじさんでは、すでに信陵君(しんりょうくん)春申君(しゅんしんくん)

紹介したので今度は、趙の平原君(へいげんくん)をクローズアップします。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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英傑というには、失敗が多い平原君

騎馬兵 騎馬軍団

 

平原君(?~251年)は、本名を趙勝(ちょうかつ)と言います。

胡服騎射(こふくきしゃ)を採用した趙の武霊王(ぶれいおう)の子で、

趙の恵文(けいぶんおう)の弟です。

しかし、この平原君、他の三名の君に比べて、軽はずみな失敗が多い

よい意味では人間くさい人物でした。

 

食客の訴えを無視して、半分の食客が逃亡してしまう

劉備

 

平原君は、他の三君のように大金を遣い、多くの食客を雇っていました。

それは3000名にも上ったと言われています。

或る時の事です、平原君の食客に足の悪い人物がいました。

たまたま、その人が足を引きずって歩いていると、それを見た平原君の

愛人が彼の悪い足を指差して笑いました。

 

食客「あなたの愛人が私の足が悪いのを見て笑いました。

男としてこれ以上の恥辱はありません、どうかあの女を殺して、

その首を私に下さいますように・・」

 

食客は、平原君にそう言って詰めよりました。

 

平原君「あい、分かった、先生を笑い物にした、あの女はきっと処分します」

 

平原君、愛人と一緒に大笑い

愛人と一緒に大笑い

 

平原君は、その場は真面目な顔で言いましたが後で

その愛人に笑いながら、この事を告げました。

 

 

「わしに雇われておる身分で、お前に足が悪いのを笑われたから

殺して首を差し出せなどと、厚かましいにも程があるのおww」

 

ところがです、しばらくすると、平原君が雇っている食客がどんどん、

ヒマを請い、自分の元を去っていくのです。

 

平原君は何が起ったか分からず、今から平原君の下を去ろうとする

食客を捕まえて理由を聞きました。

 

「あなたは、人物より女がお好きのようだ、、だから、去るのです」

 

平原君は、ハッとして気がつき、愛人の首を斬り落とし、

足の悪い食客にひざまずいて許しを請います。

 

こうして、一度、平原君の下を去った食客は次第に戻ってきたそうです。

このように平原君は、性格が軽く、大失敗をする癖がありました。

 

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領土欲しさに秦を怒らせる平原君のドジっ子ぶり

平原君のドジっ子ぶり

 

紀元前263年、韓は秦に攻められ領土を奪われます。

それにより韓の領土は分断され北にあった上党という城が孤立する事になりました。

上党は、秦に蹂躙されるのを恐れ、趙に帰属したいと使者を出してきました。

もちろん、それは代わりに秦の侵略から守ってくれという意味です。

 

当時の趙王の孝成(こうせい)王は「どうすればよいか?」と下問しました。

 

弟の平陽(へいよう)君は「上党を取れば秦は怒り、趙まで攻めこみます、

ここは、動いてはなりません」と反対します。

 

逆に叔父の平原君は「何をためらうのです、一兵も損なわず領土が増えるんです、

上党を併合しましょう」と主張します。

 

長平(ちょうへい)の戦い

白起

 

孝成王は、平原君の意見に乗り上党を併合します、平陽君が恐れた通り

秦は怒り、紀元前260年、天才将軍、白起(はくき)に趙を攻めさせます。

これが天下分け目の長平(ちょうへい)の戦いになります。

趙は45万という大軍を動員しますが敗れて、その大半を殺され一気に弱体化します。

目先の欲に捕らわれた平原君は、とんだドジっ子ぶりを発揮した事になります。

 

秦はさらに趙の都、邯鄲(かんたん)を包囲する!!

 

王騎

 

勢いにのる秦は、白起に代えて王齕(おうこつ)を将軍にして趙の都、邯鄲を包囲します。

※この王齕とは、王騎(おうき)ではないかと考えられています。

趙は、兵力をほぼ根こそぎ失ったので迎撃どころではありません。

城に籠って籠城しますが、援軍でもこない限りは、いずれは落ちるでしょう。

 

そこで責任を感じたのか、あるいは孝成王に

「お前のせいだぞ!落し前つけろやゴルァ」と脅されたのかは分かりませんが、

戦国一のドジっ子、平原君が動きだします。

 

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楚に赴き、救援を出させる事に成功する

楚に赴き、救援を出させる事に成功する

 

平原君は包囲をかいくぐり、楚まで行って救援要請を行うという危険な仕事を

引き受けます、その時に、平原君の食客で、毛遂という人物がお供を志願します。

しかし、毛遂(もうすい)は、それまで無駄飯を喰っていただけの無名の人でした。

あからさまに毛遂を疑った平原君は、これを断ります。

 

「賢者というのは鋭い錐(きり)のようなもの、袋に入っていても、いずれ穴を開けて、

先端が出てくるものだと言います、しかし、先生は我が門下に長い間おられるのに

一向に錐の先端が出ては来られない、今回はお引き取り下さい」

 

ところが、毛遂はこれを聞いて笑います。

 

「私は、これまであなたの袋に入っていなかっただけです。

一度、入れば、先端どころか、錐自体が袋を突き破り飛び出しますよ」

 

平原君は、毛遂の言い分を聞いて、しぶしぶ、これを配下に加えます。

楚につくと、楚の孝烈(こうれつ)王は秦を恐れて援軍を渋りましたが、

ここで毛遂が剣を片手に孝烈王の前に仁王立ちします。

 

「かつて、秦の白起は、楚の首都を焼いて楚の祖先を辱めました。

あなたは、それが悔しくはないのか?

この同盟は、趙の為ではない楚の仇討ちの為でもあるのですぞ!!」

 

孝烈王は、ハッとして考えを変え、趙に援軍を送る事を決意しました。

平原君は喜んで、あんだけ評価していなかった毛遂を最高待遇にします。

なんだか調子だけはいい、平原君でした。

 

平原君、自分の妻をダシに、魏の信陵君をdisりまくる

魏の信陵君をdisりまくる

 

紀元前、258年、秦軍の包囲が続く趙は、魏に親戚関係である事を

理由に援軍を要請していました。

魏王は、道義上、軍を派遣しますが、そこに秦から使者が来ます。

 

「ここで、趙を助けたら、どうなるか?分かっているんだろうなあ、てめえ!」

 

魏王は、怯えまくり、将軍晋鄙(しんひ)を派遣したものの、

邯鄲を遠巻きに見るだけで、絶対に秦に手を出すなときつく言いつけます。

 

城内から、魏軍が動かないのを見た、平原君はイライラMAXになります。

実は平原君の妻は魏の君子である信陵君の姉だったのです。

そこで、平原君は手紙魔になり、信陵君を口撃するような文面を送り続けます。

 

「やい!信陵君、言うまでも無い事だけど、あんたの姉は俺の妻だ。

あんたは、姉を見殺しにするつもりか!!

それでも、天下に名の知れた任侠の親分か、はっ!呆れるねっ!」

 

disられた信陵君は、ついに行動を起す!!

 

次々と送られてくる平原君の手紙に、信陵君は胃が痛くなります。

信陵君は、趙を救いたいと考えていたのですが、兄の魏王が秦を怖がり

少しも行動を起さないのです。

 

「こうなったら、やけだ、偽物の命令書で軍を動かし趙を救うしかない!」

 

信陵君は、遂に単独で趙を救う事を決意し(おおっ!男!)

偽の命令書で前線の将軍晋鄙を騙そうとし失敗、やむを得ず晋鄙を殺し

自ら、魏軍を率いてしまったのです。

平原君の手紙大作戦が思わぬ効果を産み出しました。

 

贅沢三昧の平原君、食糧を分け与え、趙軍の士気を高める

 

秦の包囲は3年に及んでいました、それにより一般人は食糧不足で飢え、

ついには、お互いの子供を交換して食べるようになります。

それでも、平原君のような貴族は、毎日、贅沢に食糧を喰い散らかし、

宴会などを行っています。

 

それを見かねた、李同(りどう)という兵士がやってきて平原君に直訴します。

 

「あんたは、城内の庶民の暮らしぶりを人ごとだと思っているのか?

庶民は、秦に包囲されて、喰うモノもなく、子供を取り替えて喰うぐらいだぞ。

大体、このまま趙が秦に敗れたら、あんただって、タダでは済まないぞ!」

 

平原君は、そう言われて、姿勢を正し、李同に向き直ります。

 

「確かに、先生の仰る通りです、では、私は何をすべきでしょう?」

 

「あんたが蓄えている食糧と財産を全て庶民に吐きだしてくれ、

そうやって、庶民の士気を高めれば、まだ秦に対抗できる」

 

平原君は、すぐに承諾し、すべての食糧と財産を放出し、家臣を遣って

炊き出しなどを行いました。

これにより、邯鄲の士気は俄かに上昇します。

 

李同、特攻部隊3000を率いて秦軍に突撃する

 

李同は、士気が回復した邯鄲の市民から3000名を選抜して特攻部隊を編成します。

そして、城門を開けて、何度も秦の大軍に突撃を繰り返します。

邯鄲を包囲して3年目の秦軍は、すっかり戦に飽きていました。

捨て身の趙の特攻部隊の繰り返される攻撃に嫌気がさし始めます。

 

王騎 キングダム

 

王騎「コココ・・無くすものがない人間は始末が悪いですネェ・・

そうですね、騰?」

 

と王騎が言ったかどうかは知りませんが、李同の特攻部隊は、

秦軍の士気を低下させてしまいます。

 

楚と魏の連合軍が秦を総攻撃、秦は邯鄲包囲を解く

 

ここで、士気が低下した秦軍に、楚と魏の連合軍が襲いかかります。

ここには、楚の春申君、そして魏の信陵君もいました。

不意をつかれた秦に、今度は趙も城門を開いて最後の突撃を開始します。

 

不利を悟った秦軍は、邯鄲の包囲を解いてしまいます。

これにより3年に及んだ趙と秦の戦いは趙の守り勝ちで終わりました。

色々な偶然も重なりましたが平原君の功績は小さくないでしょう。

 

最後に小物ぶりを曝す、平原君ww

 

魏の信陵君は、魏王の命令に背いた事で、魏にしばらく帰れず、

そのまま趙に滞在していました。

単独で魏から趙を救いに来た信陵君の名声は高く、平原君も改めて

友情を結んで、信陵君の元に通うようになります。

 

信陵君は、身分にこだわらず有能な人物との交流を好みました。

或る時、信陵君は味噌屋と博打(ばくち)打ちを連れて歓談していましたが、

それを見た平原君は、とても軽蔑した顔をしました。

 

「信陵君は、こんな身分の卑しい者と付き合うのか、

私は、今後、あなたとの付き合いを考え直さねばならん」

 

それを聞いた信陵君はとても怒りました。

 

「私は人間を身分ではなく賢明かどうかで付き合ってきているのです。

あなたは、人物を好むと言いながら、実は人のうわべだけしか見ないようだ」

 

それを聞いた平原君は自分の思慮の浅さを詫びますが、邯鄲の食客は

信陵君を高く評価して、平原君の所から移る食客がとても増えたという事です。

 

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春秋戦国ライターkawausoの独り言

kawauso 三国志

 

平原君は、他の3君に比較しても欠点の多い人物です。

ところが、その反面で間違ったと思うと素直に謝るなど憎めない

人間臭い一面も持っています。

 

この素直さが幸いしたのか、戦国四君では珍しく地位を保ったまま

天寿を全うしています。

 

そして、この時、包囲された邯鄲には、生まれたばかりの始皇帝がいました。

大商人呂不偉(りょふい)もいました、誰も知らない所で、

時代は新しいドラマを延々と紡いでいたのです。

 

本日も春秋戦国の話題で、乾杯!!

 

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—熱き『キングダム』の原点がココに—

春秋戦国時代  

 

 

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台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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