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NHKの名作「人形劇三国志」面白いけど呂蒙の扱いが酷い?

2021年2月28日


 

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テレビを視聴するkawauso編集長

 

人形劇三国志」は1982年10月から1984年3月までNHKで放送された人形劇です。当時から大人気で、この作品が三国志の入り口という方も多いといいます。

 

しかし、ストーリーは「三国志演義」を基にしているものの、オリジナルな部分も多い作品です。なかでも呉の武将「呂蒙(りょもう)」の扱いがとても酷いという話もあります。今回の記事では「人形劇三国志」の特徴と、呂蒙の扱いについて探ってみようと思います。

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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「三国志演義」が原作で蜀が正義

 

「人形劇三国志」の物語は基本的に小説「三国志演義」を原作に作られています。扱うのは「桃園(とうえん)の誓い」から「五丈原(ごじょうげん)の戦い」までです。しかし、特に蜀や劉備(りゅうび)を正義の味方としてストーリーが進行しており、魏や呉は悪役として扱われています。なかでも関羽(かんう)は一点の曇りもない聖人君子です。

 

五虎大将軍の関羽

 

これはこの番組が当初子供をターゲットにしていることから、ストーリーのわかりやすさ、そして勧善懲悪を強調して作ったと考えられます。そのあたりが後述する呂蒙の酷い扱いにつながってくるのです。

 

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独自のオリジナル要素

司馬朗と董卓

 

ストーリー、特にキャラクターにはオリジナル要素が多く加えられています。例えば、董卓が知恵の輪に熱中していたり、呂布の弟「(りょおう)」(海賊)など人形劇独自のオリジナルキャラクターも登場します。

 

また、物語の進行役には当時大人気だった漫才コンビ「紳助・竜助」の島田紳助さん、松本竜助さんの二人が担当し、劇中にも二人が登場します(シンシン、ロンロン)。彼らは唯一物語の最後まで登場し、見ている人が感情移入しやすいキャラです。

 

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美しく、表情豊かな人形たち

 

人形の造形は日本を代表する人形アニメ監督「川元喜八郎(かわもときはちろう)」さんが担当しています。本物の水や炎を使ったり、人形の操演にコンピュータが用いられるなど斬新な演出も取られています。

 

人形の声は、先に収録し、後にその声に合わせて人形を動かすという「プレスコ」という技法(後から声を付けるのがアフレコ)が使われており、その人形の動きはまるで実写のように豊かです。

 

声は一人の声優が複数のキャラクターを演じています。例えば主役の劉備の声の谷隼人(たにはやと)さんは他に典韋(てんい)程昱(ていいく)、関羽の石橋蓮司(いしばしれんじ)さんは張角(ちょうかく)袁紹(えんしょう)も演じています。

 

他のメインキャラクターは張飛(ちょうひ)がせんだみつおさん、孔明(こうめい)は森本レオさん、曹操(そうそう)岡本信人(おかもとのぶと)さんが演じています。本職の声優ではなく、俳優さんが多く起用されています。せんだみつおさんは演技の印象の薄いコメディアンですが、意外と違和感はありません。

 

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呂蒙の扱いが酷い!

関羽の呪いで殺される呂蒙

 

キャラクターにオリジナルな要素が加えられがちな本作ですが、なかでも呂蒙の扱いは酷いです。呂蒙は史実では孫権(そんけん)の配下で、領民の事を思いやり、同僚武将の評価も大変高い名将です。無学でしたが、懸命に勉強し学者も驚くほどの知識を得たことが有名です。

 

このエピソードが「もう“呉下(ごか)阿蒙(あもう)”ではない」(呉の町の蒙ちゃんではない)という故事につながっています。しかし、こちらの人形三国志では白髪の老人に変更され(当時41歳くらい)、関羽をおびき寄せるために領民を惨殺し、「もうこれ以上は死者を出したくない」と投降した関羽をいきなり刺し殺すなど、悪逆非道な人物として描かれています。

 

諸葛瑾

 

同僚の諸葛僅(しょかつきん)にも「なんでそんなことをするんだ!」と言われるほどです。また、関羽の愛馬「赤兎馬(せきとば)」を手に入れようと欲を出し、馬と共に谷底に落下して死ぬという悲惨な最期を迎えています。

 

 

これには「岳飛伝(がくひでん)」「銀河英雄伝説(ぎんがえいゆうでんせつ)」などで知られる作家田中芳樹(たなかよしき)さんも著書で批判しています。ちなみに呂蒙の声は森本レオさんで、憎々しい話し方が素晴らしいです。

 

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大学院で西洋古代史を研究しています。中学1年生で横山光輝『三国志』と塩野七生『ローマ人の物語』に出会ったことが歴史研究の道に進むきっかけとなりました。専門とする地域は洋の東西で異なりますが、古代史のロマンに取りつかれた一人です。 好きな歴史人物: アウグストゥス、張遼 何か一言: ライターとしてまだ駆け出しですが、どうぞ宜しくお願い致します。

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