128話:諸葛亮孔明、ついに五丈原に堕つ・・

2016年10月4日


 

孔明

 

第四次北伐を、李厳(りげん)の虚偽報告で断念せざるを得なかった

諸葛亮孔明(しょかつ・りょう・こうめい)は、毎年の遠征による蜀の疲弊を

考慮して、数年間北伐を断念し、国力の回復に励みます。

そして、西暦234年、五度目になる北伐の軍を起こしました。

この戦いこそ、孔明の生涯、最後の戦いとなる五丈原の戦いです。

 

前回記事:127話:迫る第四次北伐と蜀の抱える二つの問題点

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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司馬懿、天文を読み、魏の勝利を察知する

司馬懿

 

孔明の北伐には、反対の声があがりました。

しかし、孔明は聞かず出陣します、孔明の側近達は孔明の焦りを

感じとりましたが、その理由については考えるのを避けていました。

 

孔明は再び、祁山に出陣します、毎度のように涼州との交差点である

祁山を抑えて、魏から涼州を分断し精強な騎馬兵を手にいれる構えです。

 

司馬懿

 

孔明北伐の噂は魏の皇帝曹叡(そうえい)に届きました。

曹叡は重臣、司馬懿(しばい)を呼び寄せて、質問します。

 

曹叡「また孔明が北伐の軍を起こすという、我が軍は勝てようか?」

 

司馬懿「御心配には及びません、天文を見たところ、魏は勝利し、

蜀は不利であると出ました、孔明は必ずや敗れ去るでしょう」

 

そうして、司馬懿は長安を出発し渭水に沿って陣を敷きます。

 

孔明、孫権に使者を送り、共同作戦を提案

孔明

 

その頃、孔明は副官の費禕(ひい)に命じて呉の孫権(そんけん)に手紙を届けます。

そこには、北伐に呼応して呉も魏を攻めて欲しいと書いてありました。

孫権は、常に狙いながら、まだ落としていない合肥城を落そうと

孔明の申し出を快諾しました。

 

孫権、魏延の反乱を予言

魏延と孫権

 

費禕が帰る途中に、孫権は、このように言いました。

 

孫権魏延(ぎえん)将軍は、実力はあるが、

自分勝手でうぬぼれが強すぎる。

孔明殿の死後、反乱を起こさないとも限らないので、

まあ、注意されるがよいと思う・・」

 

それを費禕から伝え聞いた孔明は、こう言いました。

 

孔明「さすが孫権殿は名君であられる、

魏延の問題を見抜かれた。

だが、蜀の人材不足を考えると

彼の武勇を使わないというわけにもいかないのだ・・」

 

この孫権の忠告はやがて現実のものになっていきます。

 

孔明、司馬懿親子に奇策を仕掛ける

孔明と司馬懿

 

司馬懿は、息子の司馬師(しばし)を連れてきていました。

戦法はいつも通り、豊富な物量を活かしての持久作戦です。

途中、鄭文(ていぶん)という男を蜀に偽装工作で送り込みますが、

孔明に見破られて失敗しました。

 

毎回の北伐の困難であった補給の問題も孔明が発明した、

輸送兵器である木牛、流馬で解決し、同時に屯田を行って

穀物を栽培している蜀には今回は余裕がありました。

 

そこで、孔明は、司馬懿をおびき出し火計で破ろうと

奇策を考えます。

 

上方谷に偽の食料倉庫を建設し司馬懿を誘き出す

司馬懿と魏延

 

司馬懿は蜀軍のアキレス腱が補給である事を知っています。

だから、争いを避けて守備を堅くして持久しているのです。

そこで孔明は、それを逆手に取り、上方谷(じょうほうこく)という所に、

大きな食糧倉庫を建設しました。

 

しかし、これはダミーであり、倉庫の中は火薬で一杯でした。

孔明は高翔(こうしょう)という武将に命じて、毎日この上方谷の倉庫に、

荷車を運び込んで、食糧が備蓄されているように見せ掛けます。

 

それを知った司馬懿は、早速、上方谷の食料倉庫を襲撃する計画を立てます。

司馬懿は一軍を祁山に向かわせ、自身は司馬師と共に部隊を率いて、

上方谷の食糧倉庫を襲撃します。

途中には魏延の部隊がいて、慌てふためいて食糧倉庫に走っていきます。

 

司馬懿「しめた、思ったより敵の備えは少ないぞ!!」

 

司馬懿は自信を深めて、魏延を追って深入りしていきます。

ところが、全ては孔明の罠でした、魏延は食糧倉庫を通り抜けて、

合図を出します。

 

すると伏兵の弓隊が登場し、食糧倉庫に入りこんだ

司馬懿の部隊に火矢を浴びせました。

 

火薬を満載した食糧倉庫は燃え上がり、司馬懿と司馬師は、

火炎の中に包みこまれました。

 

無情、突然の雨で司馬懿と司馬師は、命拾いする

司馬懿と司馬師

 

司馬懿「しまった、、孔明の罠か、、うぬぬ、、我ら一族は、

このまま、ここで滅んでしまうのか」

 

司馬懿は息子と抱き合って涙を流しますが、そこで奇跡が起きます。

なんと、突然、天がかき曇り、大雨が降りだしたのです。

このチャンスを逃さず司馬懿の部隊は、食糧倉庫を脱出しました。

 

魏延から報告を聞いた、孔明は暫く押し黙り、そして言いました。

 

「事を謀るに人にあり、事を成すに天にあり」

 

作戦を計画して実行するまでは、人の仕事だが、

それが成功するかどうかは、天が決める事で人にはどうしようもない。

千載一遇の好機に、司馬懿を滅ぼせなかった孔明は、すでに、

天の時が蜀から離れ、魏に移っている事を感じずにはいられませんでした。

 

孫権、合肥城攻略失敗・・

孔明

 

孔明の頼みの綱、孫権の合肥攻略ですが10万の大軍で合肥城を包囲した

孫権は、魏将、満寵(まんちょう)の決死の防衛戦に手こずり、

いまだに城を落とせませんでした。

そうこうしている間に、魏帝曹叡が大軍を持って合肥に援軍に来る事が

分ると、孫権は怖じ気づき、軍を撤退させてしまいます。

 

呉の失敗を聞いた、孔明の顔には失望の色が浮かびます。

しかし、それでも孔明は、退却しようとはしませんでした。

彼には、もうやり直せる時間が無かったのです・・・

 

孔明、五丈原に陣を移し、魏軍を挑発する

司馬懿

 

孔明は、陣を祁山から、より長安に近い五丈原に移します。

そして、持久戦を取る司馬懿に、あの手この手の挑発を行います。

ある時には、女物の衣服を送りつけ、

 

「決戦を避けるお前は臆病者だ、女のようなヤツだ」

 

と司馬懿を罵倒したりします。

 

突然、孔明が戦法を変えた事で、司馬懿はピンと来ます。

ある時、孔明の使者が来ると、食事を与えて、

手厚くもてなし、さりげなく孔明の近況を尋ねます。

 

司馬懿「諸葛丞相においては、ご機嫌はいかがかな?

よく眠れているだろうか?」

 

使者は正直者だったのか、孔明が夜遅くまで仕事をし、

小さな仕事まで自分で決済し、最近はあまり食事を取らない事を

全て、喋ってしまいます。

 

司馬懿(ふっふ、、孔明、、貴様、もう長くはないな・・)

 

司馬懿は孔明が重病である事を確信し、

ますます挑発に応じなくなります。

 

使者から、司馬懿が孔明の仕事ぶりや健康状態の事ばかり

聞いていたと報告を受けた孔明は、溜息をつきました。

 

「ふっ、、司馬懿は、私をよく知っているな・・」

 

孔明、喀血し倒れる・・

魏延と姜維

 

それから暫く後、執務をしていた孔明は、激しくせき込み、

そして、血を大量に吐いて倒れました。

 

孔明「騒ぐな・・動揺してはならぬ・・」

 

駆け付けた重臣達に告げて、孔明は何事もないように立ちあがり、

魏延を呼び寄せると、魏軍に備えるように命じ、

次に姜維(きょうい)を呼ぶと、孔明が設計した、

一台で10本の矢が同時に放てる連弩の設計図を与えます。

 

そして、最後の力を振り絞り、陣中をくまなく巡ります。

それは普段と変わらない、穏やかな姿でした。

 

自分の幕舎に戻ると、孔明は、倒れこむように床につき、

みるみる病状は悪化していきました。

 

臥龍(ふくりゅう)、五丈原に堕ちる・・

孔明と劉備、関羽、張飛

 

ある時、孔明は夢を見ました、あの懐かしい隆中の草庵で

孔明は夏の太陽を避けて昼寝をしています。

 

そこに、劉備がやってきます、不思議な事に孔明よりも

ずっと若い、二十代の劉備です。

 

劉備「なんだよ、孔明、昼寝か?起きてくれよ!

俺っちの義兄弟に、お前の天下三分の計を聞かせてくれ」

 

孔明「天下三分の計・・・」

 

孔明は目をパチクリさせます。

そこに、劉備の背丈を追い越して、盛り上がるように、

虎髭の張飛(ちょうひ)と美しい髭をなびかせた関羽(かんう)が、

現れて孔明を見下ろしています。

 

張飛「なんだー?この青っちょろい にーちゃんは?

こんなヤツが、天下一の軍師なのか、兄者!」

 

関羽「こら張飛!悪態をつくな!!

失礼、我らは劉玄徳の弟分で関雲長と張益徳、

孔明先生に、天下三分の計を御教授願いたく参った」

 

孔明「どうして、両将軍がここに・・・」

 

事態が飲みこめずに孔明は辺りを見回します。

 

劉備「ま、いいじゃねーか!孔明、細かい事はよ!

それより、お前のドデカイ天下三分の計を聞かせてくれよ、

俺っちを皇帝にしちまう中華がひっくり返る、大計略をよ!!」

 

劉備は全て承知しているかのように、

人懐っこい笑顔で孔明にウインクしました。

 

孔明「我が君、それは・・」

 

孔明が起き上がろうとすると、そこは、桃の花が咲き乱れる庭園でした。

柔らかな陽光の中で、劉備、関羽、張飛が、漢を再興する為に生き、

死ぬ時は共にと誓いを立てています。

 

孔明「そうか、、ここは、、桃園・・これは夢か・・」

 

劉備と関羽と張飛は、孔明の姿を見つけると、

満面の笑みで、手招きをしました。

 

「孔明、、もういいんだ、もういいんだよ、、

長い間、どうもありがとうよ・・」

 

まばゆい光の中で、どこか照れくさそうに劉備の声が響きました。

 

薄暗い幕舎の中で、孔明は目を覚ましました。

先程までと違い、体は鉛のようで起き上がる事さえ出来ません。

 

孔明「我が君、、もう私はそちらに行っていいのですね」

 

死期を悟った孔明は、馬岱(ばたい)を呼び自身の最後の言葉を伝えます。

 

孔明「・・・私の後任は、蔣琬(しょうえん)に託すように、

彼は物事に動じず職務に忠実だ・・私が亡き後も、

帝を助け働いてくれるだろう・・」

 

馬岱が畏まり、さらに蔣琬の次の丞相を聞きます。

 

孔明「蔣琬の次は費禕がよい、、蔣琬程に融通は利かないが、

器用で全てに目が行き届く、費禕がいる限り、、蜀は安泰だ・・」

 

馬岱は、畏まり、さらに、次の丞相を聞きました。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

しかし、孔明の口が再び開く事はありませんでした。

 

馬岱「丞相ッ!!・・・・・・・・・・・」

 

時に西暦234年、旧8月23日、秋風が吹く五丈原で、

諸葛亮孔明は、54年の生涯を閉じました。

 

三国志ライターkawausoの独り言

kawauso 三国志

 

ついに三国志後編の主人公である諸葛亮孔明が五丈原に没します。

この話にも演義の脚色は多くあり、例えば孫権が孔明に魏延は、

裏切りそうだから、気をつけろと忠告したというのは脚色です。

 

また、孔明が上方谷に偽物の食糧倉庫を造り、そこに司馬懿をおびき出し

火計で焼き殺そうとして雨が降り失敗したというのも演義の創作です。

女物の衣服を司馬懿に贈り「臆病者」と挑発したのも史実ではなく

三国志演義の創作であるようです。

 

なんだか最後は、創作づくしですが、これが三国志を代表する

スーパーヒーローの最後と思えば、色々な逸話も足したくなりますよね。

そんなわけで、孔明が夢の中で、若い頃の劉備や張飛、

関羽に会うのもkawausoの創作です(笑)。

 

でも、これだけ頑張った孔明ですから

劉備は、孔明が生きている間に感謝の気持ちを

伝えたかったんじゃないですかね?

一介の傭兵隊長から、蜀漢の皇帝になれたのは、孔明のお陰ですしね。

 

あ!はじさんの基礎知識編は、まだまだ続きますよ。

本日も三国志の話題をご馳走様・・

 

次回記事:129話:死せる孔明生ける仲達を走らす

 

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台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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