劉備(りゅうび)は、蜀帝になった翌日、
初めての詔(みことのり)を下しました。
劉備:「朕(ちん)は、桃園で関羽(かんう)と義兄弟の契りを結び共に死のうと誓った
それなのに、関羽は孫権(そんけん)めに謀殺されてしまった。
朕は兄として、弟の仇を討たねば、桃園の誓いに背く事になる。
よって、ここに呉討伐の兵を興し、弟の無念を晴らさん!」
前回の記事:110話:関羽の悲報に復讐に燃える劉備
この記事の目次
趙雲が劉備を止めようとする
宮殿は騒然としますが、ここで趙雲(ちょううん)が一人劉備の前に進みでます。
趙雲:「恐れながら、陛下に申し上げる、我が国の敵は孫権ではなく
曹丕(そうひ)で御座います、今は呉と共同し、漢中から長安まで攻めのぼり、
逆賊曹丕を討伐して、一刻も早く漢の社稷(しゃしょく)を立てる事が肝要ですぞ」
普段は、趙雲の諌言には、耳を傾ける劉備ですが今は、そんな余裕はありません。
劉備:「趙雲、弟が殺されたのだ、朕は、何としても弟の仇を討たねば
一日たりとも生きてはいられぬ!!」
趙雲:「陛下、落ち着いて下さい!敵は孫権では・・」
劉備:「もう、言うな下がれ趙雲!!!」
珍しく声を荒げた劉備に、趙雲も引き下がる以外にはありませんでした。
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孔明も文武百官を引き連れて劉備との面談を要請
事態を重く見た、孔明(こうめい)は、自室に引きこもった劉備に、
文武百官を引きつれて面会を願い出ます。
孔明:「趙将軍の諌言は、ただ、将軍一人の心ではありません。
無益な戦を厭う、蜀の万民の声を代弁したものです。
重ねて諌言申し上げます、どうか、文武百官の声に、
耳を貸して頂きますよう・・・」
劉備:「・・・・分かった、孔明、もう下がれ・・・」
劉備は、思いなおし、再び、呉討伐を断念しました。
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呉討伐を断念した劉備だが...
しかし、翌日、今度は張飛(ちょうひ)が任地を離れて成都にやってきました。
関羽が死んだ事を知った張飛は、血の涙を流して慟哭する事、数日、
そして、今は関羽の恨みを晴らそうと非常の決意をしていたのです。
張飛:「陛下、、いや、兄者、どうして、あんたは関兄ぃの仇を討たねえ?
桃園の誓いを忘れちまったのか!!」
張飛に睨みつけられて、劉備はたじろぎます。
劉備:「弟よ!誓いを忘れてなどおらぬ!本当は今にでも、
討伐の軍を興し、孫権の首を刎ねて、関羽の墓前に捧げたい
しかし、ワシは、もう傭兵隊長ではない・・
蜀の百万の民の命を預かる帝だ、迂闊な事は出来ないのだ」
それを聞いて、張飛はますます顔を険しくします。
張飛:「兄者!俺は馬鹿だから難しい事はわからねえ!
だが、兄者は帝である前に、俺達の兄貴だった筈だ!!
関兄ぃは、きっと地獄で俺達が仇を討ってくれるのを待っている
あんたは、それに帝だから報いてやれねえってのか?
劉兄ぃの為に命を賭けて働いた弟の為に仇を討てねえっていうのか?
帝の位ってのは、そんなに不義理なものなのか!!」
劉備:「張飛・・・・・・すまぬ・・・」
劉備は、膝を屈して、張飛に詫びます。
張飛:「もういい、、兄者の気持ちもわかった・・
だが、俺は好きにさせてもらう!!!!
将軍の地位もいらねえ!俺は一人でも呉の領地に入り
一人でも多く呉兵をぶっ殺して関兄ぃの仇を討つ
兄者!世話になった、今日でもうお別れだ、元気でな!!」
張飛の男泣きに心を動かされる劉備
将軍の印授を投げ捨てて、立ち去ろうとする張飛に、
劉備は声を掛けました。
劉備:「張飛よ!!お前一人を死なせるわけにはいかぬ!!
わしは、帝である前に、桃園三兄弟の長兄、劉備玄徳だ!
もう腹は決まったぞ、呉を討伐し孫権の首を斬り落して、
弟関羽の仇に報いる!!」
張飛:「そうだ!それでこそ劉兄ぃだ!!
分かった、俺も直ぐに兵を興して準備をするぞ
先陣は任せてくれっ!!」
張飛は、喜び勇んで任地に帰ります。
部下に無茶な要求をする張飛
そして、部下の范彊(はんきょう)と張達(ちょうたつ)を
呼び付けて命じました。
張飛:「いよいよ、関兄ぃの弔い合戦だ!!
俺様は先陣を仰せつかった、気合いを入れなければならぬ
貴様らは、3日の間に白装束を3万人分集めよ!!」
范彊&張達:「ええっ!たった3日で白装束を3万、それは無茶です!」
范彊と張達が、膝まづいて許しを請うと、張飛は
真っ赤になってどなり散らします。
張飛:「何だとぉ!!!貴様ら、俺様の先陣にケチをつけるのか?
3日だ、3日で用意できなかったら、お前達を手始めに
血祭りにあげてやる!!」
怒りと戦に逸る心と、酒の力で張飛のいいぶんは支離滅裂です。
范彊と張達は夜中にゴソゴソ
2人は、夜中に相談しました。
范彊:「なあ、もう張飛には付き合っておれんぜ!!
ささいな事で部下を殴るし、刑罰は残忍で重いし、
最近は、特に滅茶苦茶だ」
張達:「そうだ、たった3日で白装束を3万なんて出来るわけがない
どうせ、殺されるんだ、こっちから襲いかかって張飛の首を斬っちまおうぜ!!」
范彊:「そうだ!張飛の首を斬り、呉に降伏すれば重く取り立ててくれるかも知れぬ」
范彊と張達は、密かに張飛暗殺の計略を立てて、張飛の宿舎にやってきます。
范彊:「張将軍に大事な用があって、やってまいりました」
二人が宿舎に入ると、張飛は大酒を飲んで、寝台に寝ています。
張飛:「なんだ?・・ もう白装束が3万着集まったのか?」
張飛が寝ぼけまなこで目を擦り大あくびをすると、
その隙に、范彊が、張飛の背後に回り込み、張達が隠し持っていた
短刀で、張飛の腹を刺しました。
張飛:「うぐっ、、、て、てめえらぁ・・・・」
張飛は、凄まじい形相で、二人を睨みますが、短刀は急所を
深々と貫いていました。
張飛:「りゅ、、、劉兄ぃ・・・・・・」
それが張飛の最期でした、
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張飛を裏切った二人は呉に投降
范彊と張達は、牛のような張飛の首を叩き落すと、その日の内に
呉に投降してしまいました。
張飛は、上役には従順でしたが、部下となると横暴な振る舞いが多く
また、些細な罪で部下に重罪を科したので、関羽も、劉備も、
何度も部下を大事にするように言いつけていました。
それでも、その癖は直らず、関羽が死んでからはさらに酷くなったので、
とうとう、部下に寝首をかかれてしまったのでした。
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