劉備亡き後の蜀漢で政治と軍事を一手に担い、北伐を敢行した諸葛亮。
しかし、蜀の天嶮が兵糧輸送を困難にさせ、また人材不足から諸葛亮の思惑通りにことが運ばず、大きな結果も残せないままこの世を去りました。
ただ、隆中策にもあるように荊州と益州を有した状態であれば、魏と対等に渡り合える可能性はあったのではないかと思います。そこで、今回は関羽が戦死せずに、諸葛亮の第一次北伐が前倒しでスタートしていたらと仮定して、結果を考察していきます。
前提条件
今回のifを考えるに当たり、最低条件は関羽の生存と荊州の保有です。しかし、関羽が荊州北部へ出兵する動きを見せなければ、曹操は漢中に大きな力を割いていた可能性があります。
なので樊城の戦いは必須となりますが、その条件で関羽を生かすには呉の裏切りがなかったとするしかありません。
なので、呉との関係はギリギリながらも続いていて、関羽は樊城を包囲したが援軍を率いた徐晃に敗れて敗走し、南郡まで撤退したとします。そのため、夷陵の戦いは発生せず、そこで死んだ将兵も無事。益州の物資も漢中平定に費やした分を除けば大きな損失はなかったとして考えていきます。
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北伐の時期
実際の第一次北伐は南中平定後の228年ですが、南中征伐は劉備の死後に雍闓が反乱を起こしたことが原因です。つまり、劉備が存命であれば不要だった可能性があります。
また、兵糧や貨幣、武器なども無駄にしていない状態となり、前倒しでの北伐は可能となります。
加えて221年から始まった夷陵の戦いでは、劉備が4万の兵を動員しているので、漢中平定後に数年の期間を開ければ10万近い兵力を動員できたはず。
ただ、荊州で敗北した関羽軍は立て直しが必要なので、こちらも一定の時間が必要。荊州を最低限度、主力である益州軍が遠征可能になるまで待つとして、2、3年というところでしょう。
なので、少し早めたとして222年に益州と荊州から同時に北伐をしたと考えます。
また、人物の生死に関しては曹操や呂蒙、法正のように病没した人物は史実どおり。戦死した人物は戦が発生していなければ生存とします。
張飛も夷陵の戦いが発生しないので、暗殺はされなかったとしましょう。
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進軍経路と作戦
諸葛亮の第一次北伐は祁山へと進出した後に、雍州の3郡を寝返らせ雍州西部を切り取るという作戦でした。
これは益州や漢中からでは補給線の確保が難しかったことや、涼州、雍州の異民族と手を組む目的があったと考えられます。しかし、今回のifでは関羽と荊州があり、益州にも多くの将軍が残っているので、長安強襲も不可能ではなかったはずです。
また、雍州の諸郡を寝返らせるのも根回しが必要だったはずですし、222年時点で蜀漢になびいたかも分かりません。
そして荊州の関羽軍も大規模な編成は不可能であり、単独で荊州北部を抜けなかった可能性があるので、援軍を送りやすい長安を直接攻めるはずです。
上陽の孟達と劉封もある程度の兵力を有していれば、樊城か宛城を包囲して魏を牽制するくらいはできるかもしれません。
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魏の対応
劉備が漢中を得ることができたのは、曹操が維持できる戦線の限界を超えていたからという可能性があります。魏は北部の異民族をほぼ平定していたとはいえ備えは不可欠でしたし、国内の反乱も頻発していたので、各地への予備兵の配置も必須です。
また、曹操自身は宿敵劉備を警戒してか自らが長安まで進軍しているにも関わらず、夏侯淵が討たれるまでは動きませんでした。これは荊州の関羽の動きも警戒していたからです。
迂闊に漢中へ入ると荊州で問題が起きた時の対処が遅れてしまうためにできるだけ長安に留まったと考えられます。
そのため、今回のifでも蜀漢と呉が襄陽と長安、合肥方面の三方から進軍をした場合、曹丕は長安より奥まで軍を進めることは難しかったという予想です。つまり、長安近郊での戦となります。
魏が導入できる兵力は史実で夷陵の戦いの後に呉を攻めた際に動員している30万ほど。それを三方へ分配しますが、荊州は関羽軍の数が少ないので5から8万程度、長安と合肥に10万余といったところ。
勢いがあり数も多い益州軍を曹丕自らが対応し、襄陽と樊城は車騎将軍の曹仁と左将軍の張郃、合肥は前将軍の張遼が病にかかるので、衛将軍あるいは驃騎将軍だった曹洪と右将軍の徐晃あたりが対処にあたるでしょう。
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