即座に水陸両面から呉に軍勢を進めます。
孫権はすぐに、孫桓(そんかん)と朱然(しゅねん)を迎撃に向かわせますが、
父の仇討ちに燃える張苞(ちょうほう)と関興(かんこう)の
獅子奮迅の活躍に打ち破られました。
藩璋と周泰が五虎将軍、黄忠に襲いかかる
大勢を立てなおした呉軍は、藩璋(はんしょう)、周泰(しゅうたい)を
大将に再び、襲い掛かります。
これに対して立ち向かったのが五虎将軍、黄忠でした。
黄忠:「若いものばかりに任せてはおけません、どうか、ワシにも手柄を立てる機会を!」
黄忠(こうちゅう)は、若い張苞、関興の活躍に触発されて劉備に直談判します。
劉備:「いやいや、老将軍、もう、お年なのですから無理をせず、
どうか、後陣から若い者を指導監督してやって下され」
劉備にそう言われて、引き下がる黄忠ではありません、
余計に発奮して、是非にも先陣をというので劉備は許可します。
黄忠:「有り難い、呉の連中を蹴散らしてご覧にいれましょう!」
黄忠は、勢いよく飛び出し、藩璋と周泰の軍勢を一度は追い払う
大活躍を見せます。
手柄に逸る黄忠
ところが、藩璋、周泰が、再び軍を立てなおすと苦戦します。
張苞や関興は、敵が大軍なので一度引き上げて体勢を整えましょうと
黄忠に進言しますが、手柄に逸る黄忠は聞きません。
黄忠:「馬鹿な!何のこれしき、、ワシはまだまだやれるぞ!!」
黄忠は、張苞や関興が止めるのも聞かずに、数十名の部下と
共に、藩璋の本陣に突入します。
藩璋軍はたった数十名の黄忠軍に狼狽して崩壊し、
藩璋は、慌てて、馬で敗走してしまいます。
黄忠:「はっはっは、呉の将は皆、腰抜けか!待てい!!」
黄忠は、藩璋を更に単騎で追いますが、そこに落とし穴が潜んでいました。
馬忠(ばちゅう)という呉の武将が、黄忠に背後から矢を放ったのです。
「うぐっ!!」
矢は黄忠の肩に深々と突き刺さります、肩に力が入らず黄忠は落馬しました。
仕留めようとする馬忠に黄忠はどうする?
馬忠は、喜び勇んで、黄忠を仕留めようとしますが、そこは黄忠、
肩を庇いながら、馬忠と馬忠の兵の攻撃を振りはらいます。
馬忠:「なんだ、このジジイ、死に損ないの癖にしぶといぜ!」
その時、黄忠を心配して後を追っていた、関興と張苞が黄忠を見つけます。
馬忠は、分が悪いとみて、部下と共に逃走しました。
黄忠は、二人に担ぎ込まれて、本陣に戻りますが、矢には毒が塗られ、
時間が経過するごとに、黄忠の顔色は悪くなります。
黄忠の危機に駆けつける劉備
黄忠が危ないと聞いた劉備は、慌てて駆けつけます。
劉備:「老将軍、済まなかった、わしが、お主を年寄りと言ったばかりに
お主に無茶をさせてしまった・・」
劉備が、涙を流して詫びると、黄忠は首を振りました。
黄忠:「なんのぉ・・勝負は時の運、これは拙者のヘマで御座る、、
陛下の責任ではござらん・・」
劉備が、うなだれていると、黄忠は最期の力を振り絞るように
起き上がり、劉備に向き直りました。
黄忠:「陛下と、過ごした十余年、楽しゅうござった・・
荊州の片田舎で、つまらぬ太守に使われ、一生を終わる筈であった
この老いぼれに武人の誇りを下されたのは、陛下でありますぞ。
礼を申し上げたいのは、拙者の方でござる・・」
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黄忠の最期の望み
劉備:「こ、、、黄忠、、わしは・・わしは・・」
黄忠:「陛下、老いぼれの最期の望みでござる・・
どうか・・どうか、呉と魏を滅ぼし、天下を取って下され・・」
黄忠は、そういうと仰向けに倒れ、再び目を開ける事はありませんでした。
黄忠漢升、享年75歳、戦い続けた男の見事な最期です。
劉備:「これで、五虎将軍を3人まで失った、、なのに、呉を討つ事さえ出来ぬ
わしは、先陣に立ち、兵士と苦楽を共にするぞ」
劉備は、宣言し自ら兵を率いて、前線に立つ事になります。
正史の黄忠はどうだったの?
実は,正史三国志では、黄忠は西暦220年、
劉備が漢中を制圧した頃に病死したと書かれています。
夷陵の戦いでの黄忠の活躍は演義の全くの創作であり
黄忠は戦いに参加してはいないどころか、この世にいないのです。
ですが、一生を戦場で過ごし、子供にも先立たれた黄忠が病死では可哀想、
せめて、最期は華々しく戦死させてやろうという人々の思いが、
黄忠を物語の上で甦らせ、呉軍を追いまわさせたのです。
こんなにも読者に愛された黄忠は、幸せ者だったと言えるでしょう。
今日も三国志の話題をご馳走様でした。
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