三国志とは中国の漢王朝の終焉から、三国鼎立、そして晋へ~の時代を主に「三国志」と私たちは呼んでいますね。
この三国志自体は歴史書であり、陳寿によってまとめられたいくつかの「伝」で構成されています。これを読み物として書いたのがご存知三国志演義ですが、この三国志のスピンオフ作品(ちょっと違うかな?)は三国志演義だけではありません。
今回はその幾つかとして、主に反三国志演義をご紹介いたします。
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この記事の目次
三国志演義
さてまずはちょっと三国志演義をおさらい。
基本的に三国志演義は劉備が主人公となっている歴史小説であり、後半は主人公が諸葛亮へとバトンタッチします。
このため劉備は主役然とした性格で描かれ、逆に曹操は悪役として描かれるように、やや引き立て役のように感じる武将たちも数多くいます。
その他にも呉が余り出てこない、馬良がナレ死する、張遼の活躍が(「あれ」で)簡略化されてる、曹真将軍が諸葛亮の引き立て役にされる(憤怒)などなど、多少魏ファン、呉ファンからすると納得がいかない場面もしばしば。
しかしそれを引いてもやはり物語として面白く、読みやすく、素晴らしいものであることは間違いないことはここに明言しておきましょう。
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三国志後伝
さて三国志をモチーフにした小説、漫画、ゲームなどはそれこそ夜空に煌めく星の数ほど生まれました。ある意味では三国志演義もその輝く星の中の一つであると言えるでしょう。
そんな中でもちょっと紹介したいのが三国志後伝。これは晋の天下統一後という珍しい立ち位置の話で、
しかも劉備の孫・劉エンが蜀の武将の三世たちと晋を打倒するというお話です。
こちらは八王の乱などを理解して読むと中々に面白い話ですので、よろしければご参考までに。
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反三国志演義とは?
と、ここでご紹介するのが「反三国志演義」です。その名前の通り、反三国志演義、三国志とも三国志演義ともまた違う三国志の世界を描いた読み物です。
とは言っても決して三国志と敵対するかのような話でもありません。ただし「三国志演義」もっと言うと三国志と反するお話であるのは否めません。というのもこの話、蜀が天下統一、中国統一をしてしまうからなのです。
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中国で生まれた反三国志演義
この反三国志演義、本家本元と言える中国で生まれました。その生まれた年は1924年、ここから六年ほど連載されたものです。作者は周大荒氏。凄いのはこの本は三国志演義をベース、参考にしながら、作者が古書店で購入した歴史の真実を描いたとされる「三国旧志」という古文書を参考にして書いたそうです。
ここだけでも凄い経緯ですが、ここから少しネタバレをします。
もし自身の目で確かめたい方はラストまで飛ばして下さいね!
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反三国志演義の物語:劉備が禅譲される
三国志演義では献帝は曹操に保護され、その後は曹丕に禅譲を迫られ、最後にはおれて禅譲。
蜀の地で劉備はこれに憤る……という展開ですが、なんとこの話では献帝は劉備を後継者にします。というか玉璽も劉備の元に届きます。
献帝から「後はよろしく!早く即位しろよ!」と手紙が届きます。中々アグレッシブな献帝ですね(そうではない)!
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反三国志演義の内容:ツッコミどころ(笑って読もう)
そして劉備、手紙を見て「即位とかしてる場合じゃない!献帝を救い出さなきゃ!」
その後、曹操は献帝を脅し、殺して皇帝になります。劉備、曹操は簒奪者だ!と怒りの北伐開始。
その後は司馬懿とか司馬師とか鍾会とか鄧艾とか時系列無茶苦茶に出てきますが神算鬼謀の諸葛亮が鉄砲片手に打ち破り(※だいぶ端折ってます)、魏とついでに呉も倒して劉備が天下統一。
全員元気な五虎将軍を尻目に諸葛亮は死んで、ホウ統が諸葛亮の代わりに丞相になってエンディングです(※だいぶ端折ってます)ここまでくると本当に凄いです。あと魏の武将と呉の武将の扱いも「すごい」です。
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三国志には珍しい恋愛要素も
この反三国志演義、個人的には馬超が良く出てくると思いました。それを加味してのことか、馬超の妹である馬雲リョクという女性が出てきます。そして面白いことに、趙雲と恋愛するという珍しい演出も加えられています。
反三国志演義は筆者の個人的な意見で言うと、笑って読むべき話です。真面目な時代考証やらなんやら考えてはいけません。寧ろ三国志は忘れて頭を空っぽにして読んでみて下さい。何だか不思議とおかしくなってきますから。
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三国志ライター センのひとりごと
さて多少ネタバレはしてしまいましたが、反三国志演義、どうでしょうか。気になった方は現在電子書版もあるので、よろしければ話の一環、話題の一つ。そしてより三国志の沼を開拓するために、一読下さい。
もしかしたら全く新しい三国志の世界を開くことができる……かもしれません。
どぼん!
参考文献:三国志後伝 反三国志演義
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